公開日: 2026.09.24 / 最終更新日: 2026.09.24

EC同梱物の設計|リピートにつながる入れ方と効果の測り方

自社ECの荷物に何を入れるかを決めきれないまま運用している方へ。1つの荷物で伝えることを1つに絞る考え方、購入回数での入れ替え、削る順番、封入作業が回らなくなる分岐点、効果の測り方を順番に整理します。

作業台の上で開いた配送箱に、重ねた紙片と小さな袋を手が入れようとしており、手前には封入待ちの紙の束と粘着テープ、奥には出荷前の箱が2つ並び、箱の口元に小さな光のしるしが浮かんでいる情景イラスト

自社ECの出荷作業で、納品書のほかに何を入れるかを決めきれないまま、とりあえずチラシとショップカードを毎回入れている——少人数で運営しているECでは、よくある状態です。実際に迷うのは、同梱物(商品と一緒に箱へ入れる紙やサンプルなどのこと)にどんな種類があるかではなく、どれを残してどれをやめるか、そして入れたものが効いているのかをどう確かめるかです。この記事では、同梱物を「点数を増やす施策」ではなく「1つの荷物で何を伝えるかの設計」として整理し、購入回数での入れ替え方、削る順番、封入作業が回らなくなる分岐点、効果の測り方までを、決める順番に並べます。

同梱物の設計は「何を入れるか」より「1つの荷物で何を伝えるか」から決める

荷物を開ける瞬間は、購入者の関心が最も高いタイミングです。メールやSNSと違って開封されるかどうかを心配する必要がなく、届いた人の手と目に必ず触れます。だからこそ、あれもこれもと入れたくなるのですが、実際に読まれる紙は1〜2枚が限度です。3枚も4枚も入っていると、購入者は中身を確かめずにまとめて取り出し、そのまま箱と一緒に捨てます。点数を増やすほど、1枚あたりが読まれる確率は下がっていきます。

そこで先に決めたいのが、同梱物の種類ではなく「この荷物で何を伝えるか」という目的です。目的の候補としては、たとえば次のようなものがあります。

  • 次の購入のきっかけを作る:次回使えるクーポン券、使い切りの目安、関連する商品の案内
  • 最初の不安をなくす:使い方、お手入れの方法、サイズや容量の目安、困ったときの連絡先
  • 購入者の声をもらう:レビュー投稿やアンケートの依頼、SNS投稿の呼びかけ
  • つながり続ける接点を作る:LINEの友だち追加、メール登録、会員登録の案内
  • 送り手を思い出してもらう:ショップカード、作り手や産地の背景を伝える紙

このうち、1つの荷物で確実に伝わるのは1つだけだと考えてください。5つ全部を入れた荷物は、結果として何も伝えません。逆に、目的を1つに絞ると「その目的なら、この紙に何を書くべきか」が決まり、文面の良し悪しも判断できるようになります。少人数の体制では、この絞り込みが作業量の上限を決める役割も果たします。

初回と2回目以降で入れ替える|同梱物は購入回数で設計する

では、その1つの目的をどう選ぶか。最も分かりやすい分け方は、商品の種類ではなく「その人にとって何回目の購入か」です。初めて買った人と、3回目の人と、しばらく買っていない人とでは、同じ紙を読んでも受け取り方が違います。初回の人にいきなり次回クーポンを渡しても、まだ商品が手元で使われていないため判断ができません。逆に、何度も買っている人に毎回同じ使い方の説明を渡しても、読む理由がありません。

同梱物を購入回数の3つの場面で分けた分類図。初回の購入は最初の不安をなくすことを目的に使い方と連絡先の1枚を入れ問い合わせ件数を見る、2回目以降は次に買う時期を伝えることを目的に使い切りの目安と専用コードを入れ利用件数を見る、しばらく購入がない人は荷物が発生しないためメールやLINEの役割になり再び購入した件数を見る、という3列で並べている

図の3つの場面は、同時に全部を用意する必要はありません。まず初回向けの1種類だけを作り、それが回るようになってから2回目以降向けを足す、という順番で十分です。分け方を増やすほど、出荷のたびに「この人は何回目か」を判断する手間が発生します。判断が必要な分岐は、少人数の現場では2〜3通りが上限だと考えてください。

  • 初回の購入:使い方・お手入れ・困ったときの連絡先を1枚にまとめる。返品や交換の条件もここで伝えておくと、あとの問い合わせが減ります
  • 2回目以降の購入:使い切りの目安と、次回使える専用コードを1枚に。「いつ買い直すか」が分からないまま離れていく人は想像以上に多いため、周期の目安を書くだけでも役に立ちます
  • しばらく購入がない人:再開のきっかけになる案内を1枚。ただし、この場面は同梱物では届けられません(荷物が発生していないため)。メールやLINEの役割になります

3つ目の但し書きは重要です。同梱物が届くのは「今まさに買ってくれた人」だけで、離れてしまった人には届きません。同梱物は離脱した人を呼び戻す道具ではなく、今買ってくれた人を次につなぐ道具です。自社のリピート率をどう数えるかを先に決めておくと、同梱物を入れ替えたときの変化も見やすくなります。計算の前提と着手の順番はECのリピート率の平均と上げ方|計算方法と最初にやる施策の順番に整理しています。

何を入れないかを先に決める|種類ごとの手間と、測りやすさで見比べる

目的を1つに絞ると、次は「では何を入れないか」を決める作業になります。ここで判断の材料になるのは、その同梱物が果たす役割だけではなく、封入にかかる手間と、効果を後から確かめられるかどうかの2つです。手間が大きいわりに効果を測れないものから外していくと、迷いが減ります。

同梱物向く目的封入の手間効果の測りやすさ
納品書・明細取引の記録を残す小(出荷作業にもともと含まれる)測る対象ではない
使い方・お手入れの案内最初の不安をなくす小(商品ごとに1種類で足りる)低い(問い合わせ件数から間接的に見る)
次回使えるクーポン券次の購入のきっかけを作る高い(専用コードの利用件数で分かる)
レビュー・アンケートの依頼カード購入者の声を集める中(専用QRの読み取り数で分かる)
サンプル・試供品別の商品を試してもらう大(商品ごとの仕分けが増える)中(対象商品の購入件数で見る)
カタログ・冊子取扱商品の全体を伝える中(重量が増え送料にも響く)低い
手書きのメッセージ送り手を思い出してもらう大(出荷件数に比例して増える)低い
同梱物の種類と、向く目的・封入の手間・効果の測りやすさ(手間と測りやすさは一般的な目安)

表を眺めると、手間が小さく効果も測れるのはクーポン券と依頼カードで、手間が大きく効果が測りにくいのがサンプルと手書きのメッセージだと分かります。これは「手書きをやめるべき」という意味ではありません。出荷件数が1日に数件のうちは手書きが最も強い武器になりますし、件数が増えたときに真っ先に回らなくなるのも手書きだ、という事実を先に知っておくという意味です。件数が増えたら、手書きは特定の条件(初回だけ、一定額以上だけ)に絞るか、印刷した定型文に切り替える前提で始めてください。

削っていった結果、次の購入のきっかけを作る紙だけが残ることはよくあります。1回あたりの点数を増やす打ち手と組み合わせたい場合はEC客単価の上げ方|クロスセル・セット販売・送料無料ラインの順番、購入者の声を集める依頼の文面とタイミングはECレビューの集め方|依頼メールのタイミングと文面の作り方で整理しています。

封入作業が回らなくなる分岐点|点数・分け方・出荷の波で決まる

同梱物の設計がうまくいかなくなる原因のほとんどは、内容の良し悪しではなく、封入作業が続かなくなることです。入れ忘れた荷物、違う紙が入った荷物、繁忙期だけ何も入っていない荷物——こうした揺れが出始めると、効果を測ろうとしても数字が読めなくなります。先に分岐点を知っておくと、越える前に手を打てます。

分岐点起きること先に決めておくこと
同梱物が4点以上になる入れ忘れ・入れ違いが増え、検品の手戻りが出る1つの荷物に入れる紙は3点までと決め、増やしたいときは1点減らす
商品ごとに入れるものを変える出荷のたびに仕分けの判断が入り、決めた担当者以外が作業できなくなる商品ではなく購入回数で分ける。分け方は2〜3通りまでにする
繁忙期に出荷件数が数倍になる同梱物の封入だけが後回しになり、何も入っていない荷物が出る繁忙期は同梱物を1点に固定する、という取り決めをあらかじめ置く
印刷物を一度に大量に刷る文面を直したくなったときに在庫が足かせになる刷る量は3か月で使い切る量までにする
出荷を物流の委託先に任せている同梱物の差し替えに締め日と追加の作業が発生する差し替えの締め日と、何通りまで分けられるかを契約前に確認する
封入作業が回らなくなりやすい分岐点と、先に決めておくこと

特に見落とされやすいのが、最後の委託先の行です。自社で出荷しているうちは紙を差し替えるのは数分の作業ですが、委託先に預けた瞬間に、差し替えは事前の連絡と締め日を伴う作業に変わります。将来的に出荷を委託する可能性があるなら、同梱物の種類を増やす前に、その条件を確認しておくほうが安全です。

  • 作業手順を1枚の紙にして梱包台に貼る:担当者が休んだ日でも同じものが入るようにします。紙が3点までなら、手順も1枚に収まります
  • 同梱物の在庫を見える場所に置く:切らしたことに出荷当日に気づくと、その日の荷物だけ内容が変わります
  • 入れ替えるのは月に一度までにする:頻繁に変えると、どの期間にどれが入っていたかが分からなくなり、効果の判断ができなくなります

クーポンや特典を入れるときに確認すること|景品表示法の考え方

次回使えるクーポンやおまけを同梱する場合は、景品表示法(景品類の提供と表示について定めた法律)の考え方を一度確認しておくと安心です。ここでのポイントは、渡すものが「値引き」に当たるのか「景品類」に当たるのかで、扱いが変わる点にあります。

消費者庁の解説では、自社の商品・サービスの代金を取引通念上妥当と認められる基準に従って割り戻すもの、つまり値引きは景品類に当たらないものとして整理されています。一方、商品とは別の物品やサービスを付ける場合は、景品類に当たり得ます。ただし、同じ企画の中で景品類と組み合わせて行う場合は値引きとして扱われないとされているなど、線引きは組み合わせ方によっても変わります。

抽選などによらず購入者全員に付ける景品類(総付景品)には、限度額の定めがあります。消費者庁が示す整理では、取引の価額が1,000円未満の場合は200円まで、1,000円以上の場合は取引の価額の10分の2までが上限とされています。また、商品の販売に必要な物品や、見本・宣伝用の物品など、この制限が適用されないものも挙げられています。同梱物の多くは後者に近い性質を持ちますが、実際にどう扱われるかは内容によって変わります。

自社ECで検討するときは、①渡すものが値引きなのか別の物品なのか、②購入者全員に渡すのか抽選なのか、の2点をまず整理したうえで、消費者庁の景品規制に関する案内と、出店しているモールや利用中のカートサービスの規約をあわせて確認してください。個別の企画がどちらに当たるかは一概には言えないため、判断に迷う内容であれば、実施前に専門家へ相談することをお勧めします。

効果をどう測るか|同梱物ごとに別のコードとQRを用意する

同梱物が続かなくなるもう一つの理由は、効いているのかどうかが分からないまま入れ続けることです。紙は配ったあとに何も返してこないため、測る仕掛けを紙そのものに埋めておく必要があります。用意するのは次の4つだけで足ります。

  • 同梱物ごとに別のクーポンコードを発行する:初回向けと2回目以降向けで同じコードを使い回さないこと。利用件数が、その紙が読まれて行動に至った件数の下限になります
  • QRコードのリンク先に入口の印を付ける:UTMパラメータ(URLの末尾に付ける識別用の文字列)を同梱物ごとに変えると、アクセス解析で読み取られた数を分けて見られます
  • 封入した件数を分母として記録する:利用件数だけでは判断できません。期間中の出荷件数を分母に置くのが最も簡単です
  • 週に1回、同じ曜日に件数で見る:件数が少ないうちは率の指標が大きく振れるため、まずは件数のまま見ます

LINEの友だち追加やメール登録を同梱物の目的にする場合は、追加してもらったあとに何を配信するかまで決めてから入れてください。追加された直後に何も届かないと、そのまま解除されてしまいます。友だち集めと配信設計はLINE公式アカウントのEC活用|友だち集め・配信設計・費用に整理しています。

判断までの期間も先に決めておきます。同梱物の効果は渡したその日には出ません。次に買うまでの周期が1〜2か月の商材なら、少なくとも2周期分(おおむね3〜4か月)は同じ内容のまま続けてから判断するのが現実的です(周期は商材によって大きく変わるため、自社の購入間隔に置き換えてください)。その期間内に文面や点数を変えてしまうと、何が効いたのかを分けられなくなります。逆に、期間を決めずに続けると、効いていないものを何年も入れ続けることになります。

まとめ——1荷物1目的・削る順番・測るコードの3つを先に決める

同梱物は、点数を増やすほど効く施策ではありません。1つの荷物で伝えることを1つに絞り、購入回数で入れ替え、手間が大きく効果を測れないものから削り、残したものには専用のコードとQRを付けて件数で見る。この4つを決めるだけで、少人数の体制でも続けられる形になります。最初に作るのは初回向けの1種類だけで十分です。それが毎回同じように入るようになってから、2回目以降向けを足してください。

同梱物では伝えきれない購入の周期を、仕組みとして持ちたい場合はEC定期購買の仕組みと設計|解約が起きる回と引き止めの作り方が参考になります。購入後の導線を同梱物・メール・LINEまでまとめて整理したいときは、awai Buildのサービス詳細でご確認いただけます。

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よくある質問

Q. 同梱物は何点くらい入れるのが適切ですか?
A. 商材や体制によりますが、1つの荷物に入れる紙は3点までを上限に置くと運用しやすくなります。読まれる紙は1〜2枚が限度で、点数を増やすほど1枚あたりが読まれる確率は下がるためです。また、4点以上になると入れ忘れや入れ違いが増え、検品の手戻りが出やすくなります。増やしたくなったときは、代わりに1点減らす前提で考えてください。
Q. 初回の購入と2回目以降で、入れるものを変えるべきですか?
A. 変えるのがお勧めです。初回の人は商品をまだ使っていないため、次回クーポンを渡しても判断ができません。最初の不安をなくす内容(使い方・お手入れ・連絡先・返品の条件)のほうが役に立ちます。2回目以降は、使い切りの目安と次回使える専用コードに切り替えます。ただし分け方を増やすと出荷時の判断が増えるため、2〜3通りまでに留めるのが現実的です。
Q. 手書きのメッセージは入れたほうがよいですか?
A. 出荷件数が1日に数件のうちは、送り手を思い出してもらう手段として強く働きます。一方で、件数に比例して作業時間が増えるため、出荷が伸びたときに最初に回らなくなるのも手書きです。始める段階から、件数が増えたら初回だけに絞る、または印刷した定型文に切り替える、という移行の条件を決めておくと、途中で急に止まる事態を避けられます。
Q. 同梱物の効果は、どうやって測ればよいですか?
A. 同梱物ごとに別のクーポンコードを発行し、QRコードのリンク先にも同梱物ごとに違う印(UTMパラメータ)を付けてください。そのうえで、期間中に封入した件数を分母として記録します。週に1回、同じ曜日に、コードの利用件数とQRの読み取り数を件数のまま見るのが、件数が少ない段階では最も判断しやすい方法です。
Q. 効果があるかどうかは、どのくらいの期間で判断すればよいですか?
A. 次に買うまでの周期の2倍程度は同じ内容のまま続けてから判断するのが現実的です。周期が1〜2か月の商材なら、おおむね3〜4か月が一つの目安になります(周期は商材によって大きく変わるため、自社の購入間隔に置き換えてください)。その間に文面や点数を変えてしまうと、何が効いたのかを分けられなくなります。
Q. 同梱するクーポンやおまけに、法律上の注意点はありますか?
A. 景品表示法の考え方を確認しておくと安心です。消費者庁の解説では、自社の代金を妥当な基準で割り戻す値引きは景品類に当たらないものとされる一方、別の物品を付ける場合は景品類に当たり得るとされています。抽選によらず全員に渡す景品類(総付景品)には限度額の定めもあります。個別の企画がどちらに当たるかは組み合わせ方によっても変わるため、消費者庁の案内と、利用中のモール・カートサービスの規約をあわせて確認し、迷う場合は実施前に専門家へご相談ください。

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