公開日: 2026.06.11 / 最終更新日: 2026.09.14

売れ筋・死に筋分析のやり方|ABC分析と交差比率の5ステップ

売れ筋・死に筋の判断を勘に頼っていませんか。ABC分析と交差比率を使い、商品別の売上・粗利・在庫効率から売れ筋と死に筋を数字で見分ける手順を、5つのステップとつまずきポイントで解説します。

売れ筋から死に筋へ高さが下がっていく棒の上に同じ商品箱が並び、低い側を虫めがねで確かめている情景イラスト

「あの商品はよく出ている」「これはあまり動かない」——現場の肌感覚は貴重ですが、肌感覚だけで品揃えや仕入れを決めると、2つの罠にはまります。よく売れているが儲かっていない商品を増やしてしまう罠と、静かに稼いでいる商品を切ってしまう罠です。

この記事では、売れ筋・死に筋を数字で確かめる手順を5つのステップで解説します。使う道具はABC分析と交差比率という教科書的な手法ですが、実務でつまずくポイントは教科書に書かれていません。各ステップにそのつまずきどころを添えます。

全体像:5つのステップ

  • STEP1:商品別の売上・粗利・在庫データを揃える
  • STEP2:ABC分析で「売上の顔ぶれ」と「粗利の顔ぶれ」を分けて見る
  • STEP3:交差比率で在庫効率を測り、死に筋の候補を挙げる
  • STEP4:死に筋候補を機械的に切らず、役割を確認してから処分を決める
  • STEP5:四半期ごとの定例に組み込み、一回きりで終わらせない

STEP1:商品別の売上・粗利・在庫データを揃える

分析の材料は3つ。商品別の売上高、商品別の粗利、商品別の平均在庫です。期間は季節性をならすため、最低でも直近6ヶ月、できれば12ヶ月分を用意します。

つまずきポイントは、商品コードの不統一です。同じ商品が販売システムと在庫システムで別コードになっている、規格違いが同一コードに混ざっている——この状態で集計すると結果が信用できません。完璧を目指す必要はなく、売上上位の主要商品からコードを揃えれば分析は始められます。

作業の手順としては、①販売システムから商品別の売上・売上原価を期間指定で書き出す、②在庫システムから期首・期末の在庫金額を書き出す、③商品コードで結合する、の3つです。①②が別システムで、コードが揃っていない場合は、売上上位100商品だけ手で対応表を作れば先に進めます。全商品を揃えようとして止まるのが最もよくある失敗です。

STEP2:ABC分析は「売上」と「粗利」の2回やる

ABC分析とは、商品を売上の大きい順に並べ、累計で全体の7割を占めるまでをA、9割まででB、残りをCと区分する手法です。多くの場合、上位2割ほどの商品が売上の大半を占める構造が見えてきます。

ここでのつまずきは、売上だけでABC分析を終えてしまうことです。必ず粗利額でも同じ分析を行い、2つの結果を突き合わせてください。売上ではAなのに粗利ではCという商品は「よく出るが儲からない商品」であり、値付けか仕入条件の見直し対象です。逆に売上Bでも粗利Aなら、それは静かな稼ぎ頭です。

売上のABC区分と粗利のABC区分を縦横に組み合わせたマトリクスで、看板商品・静かな稼ぎ頭・見直し対象・死に筋候補を仕分ける図
売上と粗利のABC区分を掛け合わせると、商品の本当の顔ぶれが見えてくる

STEP3:交差比率で「在庫の働き」を測る

交差比率は、粗利率に在庫回転率(一定期間に在庫が何回入れ替わったか)を掛けた指標です。意味を意思決定の言葉に直すと「在庫に寝かせたお金が、どれだけ働いて粗利を持ち帰ってくるか」。粗利率が高くても回転が極端に遅ければ、その在庫は倉庫で眠っているお金です。

計算式は次のとおりです。表計算に列を足すだけで出せます。

  • 在庫回転率 = 期間の売上原価 ÷ 平均在庫金額(平均在庫は期首と期末の平均で十分です)
  • 粗利率(%) = 粗利 ÷ 売上 × 100
  • 交差比率 = 粗利率(%) × 在庫回転率

数値にすると直感に反する結果が出ます。たとえば粗利率30%で在庫回転が年6回の商品は交差比率180、粗利率50%でも回転が年1回の商品は交差比率50。粗利率だけ見れば後者が優等生ですが、在庫の働きで見ると前者が3倍以上稼いでいます。「高粗利だから残す」という判断が、実は倉庫をお金で埋めているだけ、というのは珍しくありません。

交差比率が低く、売上・粗利のABC分析でもC区分に沈む商品が、死に筋の有力候補になります。つまずきポイントは、発売直後の商品や意図的に在庫を厚くした商品まで機械的に死に筋と判定してしまうこと。数字は候補を挙げるまでで、判定はSTEP4に委ねます。

STEP4:死に筋候補は「役割」を確認してから切る

候補に挙がった商品について、数字に表れない役割を確認します。主力商品と一緒に買われる付属品ではないか。特定の重要顧客のための品ではないか。品揃えの幅を見せる役割はないか。役割が確認できなければ、値下げ処分・仕入停止・自然消化のいずれかを決め、決めた期日で実行します。「いつか売れるかもしれない」と保留にすることが、死に筋分析の最大の敵です。

死に筋と決めた後、どう処分するか

「切る」と決めても、現物は残ります。処分の選択肢は4つで、どれを選ぶかで手残りも会計上の扱いも変わります。

方法手残り向いている状況注意点
値下げして売り切る原価割れでなければ最も有利需要は細いが存在する。棚を空けたい値下げ幅を決めずに小出しにすると、結局売れ残る
セット・おまけとして付ける単体では売れない在庫を動かせる主力商品と併売できる主力の値引きと受け取られない見せ方が必要
仕入先への返品・引き取り交渉条件次第で原価回収仕入先との継続取引がある交渉できるのは通常、入荷から一定期間内。早いほど通る
廃棄・処分手残りはないが保管費が止まる品質劣化・廃番で売れる見込みがない廃棄の事実を証憑として残す。処理の扱いは顧問税理士に確認する
死に筋在庫の処分方法と判断の目安

判断の目安は、その在庫を保管し続ける費用(倉庫代・棚のスペース・棚卸の手間)が、値下げによる損失を上回るかどうかです。多くの会社は保管費を無視して「いつか売れる」と持ち続けますが、その間に棚と資金が塞がっている損失のほうが大きくなります。

STEP5:四半期ごとの定例にする

売れ筋・死に筋は入れ替わります。一度きりの大掃除で終わらせず、四半期に一度、同じ手順で見直す定例に組み込んでください。つまずきポイントは集計作業の重さです。初回はExcelで数日かかった集計が毎回発生するなら、定例化は続きません。

売れ筋・死に筋分析で、現場が言わない3つの本音

手法の解説には出てこない、実務でだけ効く本音を3つ挙げます。

  • 「死に筋はすぐ切れ」は乱暴すぎる。数字だけで切ると、主力と一緒に買われる付属品や、来店動機になっている商品まで消え、客数ごと落ちることがある。切る前に、その商品の役割を1行で言えるかを問う
  • ABC分析を売上だけで回すと、必ず「よく売れる不採算品」を増やしてしまう。売上はAなのに粗利はCという商品は、扱うほど忙しくなって儲からない、最も危険な優等生。粗利のABCと必ず突き合わせる
  • 分析を「年1回の大掃除」にした瞬間、形骸化する。売れ筋・死に筋は毎四半期入れ替わるので、手集計に数日かかる状態では、二度目からやらなくなる

共通するのは、数字は「候補を挙げるまで」で、切る・残す・育てるの最終判断は人が役割を見て決める、という線引きです。この線を引けている会社ほど、分析が実際の品揃え改善に直結します。

ここが仕組み化のしどころです。集計に毎回数日かかる状態では、判断に時間を使う前に力尽きます。販売・在庫・会計のデータを集めて整える部分を定型化できれば、経営者の時間は「切る・残す・育てる」の判断だけに使えるようになります。

分析結果を、現場にどう伝えるか

数字で候補を絞り込んでも、それを仕入・棚割りの判断に落とすのは現場の担当者です。分析結果を一方的に「この商品は死に筋だから切ります」と伝えると、現場の感覚と数字がぶつかり、次回から協力が得られにくくなります。

有効なのは、判断そのものより先に、数字の見方を共有することです。売上と粗利のマトリクス、交差比率の考え方を現場と一緒に見る場を作ると、「なぜこの商品が候補に挙がったか」を担当者自身が説明できるようになり、切る・残すの合意形成が早くなります。

分析の頻度を四半期に固定するのと同じように、結果を伝える場も定例に組み込むと効果が続きます。都度個別に説明していると、担当者ごとの理解にばらつきが出て、次第に運用が有名無実化していきます。

この論点の前段として得意先別の実質収益の出し方、次の一手として在庫の欠品予兆管理も参考になります。

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よくある質問

Q. 売れ筋・死に筋分析は何から始めればいいですか?
A. 商品別の売上・粗利・平均在庫の3つを、直近6〜12ヶ月分そろえるところからです。そのうえで売上の大きい順に並べ、累計で7割までをA・9割までをB・残りをCに区分します(ABC分析)。重要なのは、同じ分析を粗利額でもう一度行うことです。売上ではAなのに粗利ではCという商品が、扱うほど忙しくなって儲からない最も危険な商品として浮かび上がります。
Q. 死に筋はすぐ切るべきですか?
A. 数字だけで判断しないでください。主力商品と一緒に買われる付属品、特定の重要顧客のための品、品揃えの幅を見せる商品など、数字に表れない役割を持つものがあります。判断の手順は、①交差比率とABC区分で候補を挙げる、②その商品の役割を1行で説明できるか確認する、③説明できなければ値下げ・セット化・返品交渉・廃棄のいずれかを期日付きで決める、です。「いつか売れるかもしれない」と保留にすることが最大の敵です。
Q. 現場の感覚と数字がずれるときは、どちらを信じればいいですか?
A. まず数字で事実を確認し、そのうえで現場の感覚を突き合わせます。ずれの原因はたいてい、現場が見ている「よく出る」が売上数量の話で、数字が示しているのが粗利や在庫効率の話、という視点の違いです。売上と粗利のマトリクスを現場と一緒に見る場を作ると、「なぜこの商品が候補に挙がったか」を担当者自身が説明できるようになり、合意形成が早くなります。
Q. 交差比率はどう計算しますか?
A. 交差比率=粗利率(%)×在庫回転率です。在庫回転率は期間の売上原価÷平均在庫金額で求めます。たとえば粗利率30%で年6回転の商品は交差比率180、粗利率50%でも年1回転なら50となり、粗利率が高いほうが在庫としては働いていないことが分かります。表計算に3列足すだけで出せるので、まずは売上上位100商品で試してみてください。

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