公開日: 2026.10.06 / 最終更新日: 2026.10.06
ネットショップの特定商取引法に基づく表記|個人の書き方と省略条件
ネットショップに必須の「特定商取引法に基づく表記」の書き方を、消費者庁のガイドに沿って整理します。表示する項目の一覧、個人・小規模事業者が住所や電話番号を省略できる条件と記載例、送料・支払時期・返品の書き方、最終確認画面との関係まで。
カートサービスで店を開く手続きの途中に、「特定商取引法に基づく表記」の入力欄が出てきます。法人であれば会社の所在地と代表電話を書けば済みますが、個人や家族経営の小さな店では、自宅の住所と携帯電話の番号を公開することになるのか、屋号だけではだめなのか、で手が止まります。この記事では、消費者庁が公開している特定商取引法ガイドの記述をもとに、この表記が誰に何を求めているか、表示する項目の一覧、個人・小規模の事業者が住所や電話番号を省略できる条件と記載例、迷いやすい項目の書き方、そして2022年6月の改正で加わった最終確認画面との関係までを整理します。本記事は制度の概要を整理したもので、個別の判断は消費者庁の一次情報と専門家への相談で確認してください。
「特定商取引法に基づく表記」は何のためのページか
ネットショップでの販売は、特定商取引法でいう「通信販売」にあたります。特定商取引法は、通信販売の広告に販売価格や事業者の氏名・住所・電話番号などを表示することを事業者に義務づけており(法第11条)、消費者庁の特定商取引法ガイドにその項目が示されています。ここでいう「広告」には、商品ページを含むウェブサイト全体が含まれます。ただし、すべての商品ページに全項目を書くのは現実的ではないため、全商品に共通する事項を1ページにまとめて置くのが「特定商取引法に基づく表記」ページです。
この義務は、法人か個人かを問いません。消費者庁の通信販売広告Q&Aでは、事業を行ううえで責任の所在を明らかにすることは不可欠であり、法人であれ個人であれ氏名または名称を表示することが必要、とされています。副業で始めた小さな店でも、無料のカートサービスで開いた店でも、同じ表示義務がかかります。
表示する項目の一覧|消費者庁ガイドの表示事項
消費者庁の特定商取引法ガイド「通信販売広告について」に挙げられている表示事項は、次のとおりです。多くのカートサービスの入力欄はこれに沿って並んでいるため、欄を埋めれば一通りそろう形になっていますが、各項目で何を書くべきかは自社で決める必要があります。
| 表示事項 | 書く内容 | 個人・小規模で迷いやすい点 |
|---|---|---|
| 販売価格(役務の対価) | 税込価格。商品ごとに表示していればその旨 | 商品ページに書いていれば、表記ページでは「各商品ページに表示」と書ける |
| 送料 | 金額。地域別なら区分ごとの金額 | 商品やサイズで変わる場合、最高送料と最低送料や数例の表示も認められる(請求があれば詳細を提供) |
| 販売価格・送料以外に購入者が負担する金銭 | 代引手数料、振込手数料、梱包料など | 「振込手数料はお客様負担」のように、誰が負担するかを明記する |
| 代金の支払時期と支払方法 | 決済手段ごとの支払時期 | クレジットカードは「注文時に決済(引落日はカード会社の規定による)」、銀行振込は「注文後○日以内に前払い」のように手段別に書く |
| 商品の引渡時期 | いつ発送・到着するか | 「入金確認後○営業日以内に発送」「受注生産品は○週間」のように、決済手段・商品種別で分けて書く |
| 申込みの期間に関する定め | 期間限定販売があればその旨 | 予約販売・期間限定セールなどを行う場合のみ |
| 申込みの撤回・解除に関する事項(返品特約) | 返品の可否、条件、送料負担、返金方法 | 書いていなければ、商品到着から8日以内の返品に送料購入者負担で応じることになる |
| 商品が契約内容に適合しない場合の責任 | 特約がある場合のみ | 不良品・誤配送の責任を限定する特約をする場合に表示。通常の返品特約と区別して書く |
| 事業者の氏名(名称)・住所・電話番号 | 戸籍上の氏名または登記商号、現に活動している住所、確実に連絡が取れる電話番号 | 屋号・サイト名のみは不可。住所・電話番号は条件を満たせば省略可(次節) |
| 法人がインターネットで広告する場合の代表者または業務責任者の氏名 | 代表者名または通販業務の責任者名 | 法人のみ。個人事業者には該当しない |
| ソフトウェア取引の場合の動作環境 | 対応OS・ブラウザなど | デジタル商品を扱う場合のみ |
ほかにも、電子メール広告を送る場合の表示など、販売の形によって追加で必要になる事項があります。ここに挙げたのは、物販の自社ECで一般に関わる範囲です。
個人・小規模の記載例|住所と電話番号を省略できる条件
個人事業者がもっとも迷うのが、氏名・住所・電話番号です。消費者庁の通信販売広告Q&Aの考え方は、次の3点にまとめられます。
- 氏名は省略できない:個人事業者は戸籍上の氏名または商業登記簿に記載された商号を表示する必要があり、通称や屋号、サイト名のみの表示は認められません。屋号を併記することはできますが、屋号だけで氏名に代えることはできません
- 住所・電話番号は条件つきで省略できる:消費者からの請求によって、広告表示事項を記載した書面または電子メール等を「遅滞なく」提供することを広告に表示し、かつ、実際に請求があった場合に遅滞なく提供できる措置を講じている場合には、住所と電話番号の表示を省略できます。表示する場合は、住所は現に活動している住所、電話番号は確実に連絡が取れる番号である必要があります
- バーチャルオフィスの住所・電話番号は条件つき:運営事業者が個人事業者の現住所と本人名義の電話番号を把握しており、確実に連絡が取れる状態であることなどが条件として示されています
住所と電話番号を省略する場合の記載例は、次のような形になります。
- 販売業者:(戸籍上の氏名) ※屋号「○○」として販売しています
- 所在地:ご請求があれば遅滞なく開示します(開示のご請求は下記メールアドレスへ)
- 電話番号:ご請求があれば遅滞なく開示します(開示のご請求は下記メールアドレスへ)
- メールアドレス:(確実に受信・返信できるアドレス)
- 開示の方法:ご請求をいただいた日から○営業日以内に、電子メールで書面をお送りします
省略の条件は「表示している」ことと「実際に遅滞なく提供できる」ことの両方です。表記ページに一文を書いただけで、請求が来ても返信しない、何週間も放置する、という運用では条件を満たしません。開示用のメールアドレスを決め、請求が来たときに誰がいつまでに何を送るかを決めて、記載例の最後の行のように表記ページにも書いておくと、運用と表示がそろいます。
一部のカートサービスには、個人・個人事業主を対象に、表記ページの所在地と電話番号を非公開にし、代わりに運営会社の所在地・電話番号を表示する機能があります。利用できる条件や、開示請求があったときの流れは、各サービスのヘルプで確認してください。どの方法を採る場合でも、氏名の表示が必要である点は変わりません。
迷いやすい項目の書き方|送料・支払時期・引渡時期・返品
事業者情報のほかに、書き方で迷いやすいのが金銭と時期に関する項目です。考え方を順に挙げます。
送料は、全国一律なら金額を1つ、地域別なら区分と金額を並べて書きます。商品のサイズや地域で変わり、すべてを書ききれない場合は、最高送料と最低送料や数例の表示も認められていますが、その場合は請求があれば遅滞なく詳細を提供できる体制を用意しておきます。北海道・沖縄・離島への加算の決め方と表示はECの地域別送料の設定|北海道・沖縄・離島の追加送料の決め方で整理しています。
支払時期と支払方法は、決済手段ごとに分けて書きます。クレジットカードであれば注文時に決済が成立し、実際の引落日はカード会社との契約によるため「ご利用のカード会社の規定による」と添えます。銀行振込やコンビニ払いは前払いが一般的で、「ご注文後○日以内にお支払いください。期限を過ぎた場合はキャンセルとさせていただきます」のように、期限と期限後の扱いまで書きます。
引渡時期は「いつ発送するか」を、決済手段と商品の種類で分けて書きます。在庫品は「決済確認後○営業日以内に発送」、受注生産品は「ご注文から○週間程度」、予約商品は「商品ページに記載の発売日以降順次」のように、購入者が自分の注文に当てはめて読める粒度にします。
申込みの撤回・解除に関する事項(返品特約)は、トラブルの原因になりやすい項目です。返品の可否・条件・送料負担・返金方法を書きますが、書いていない場合は、商品を受け取った日から8日以内であれば購入者都合でも、送料購入者負担で返品に応じることになります。何をどこまで受けるかの決め方はEC返品ポリシーの書き方|返品特約の条件とクレームを減らす決め方で詳しく扱っています。不良品・誤配送(商品が契約内容に適合しない場合)の責任について特約をする場合は、購入者都合の返品特約とは別の項目として書きます。
表記ページの置き場所と、最終確認画面の表示義務
表記ページは、サイト内のどのページからも1〜2クリックで到達できる場所に置きます。一般的にはフッターのリンクです。商品ページや購入手続きの画面からも到達できることを確かめてください。表記ページがあっても、購入者が見つけられない場所にあれば意味がありません。
もう一つ、2022年6月1日施行の改正特定商取引法で、インターネット通販の注文の最終確認画面にも表示が求められる事項が定められました。消費者庁の特定商取引法ガイドは、インターネット通販の場合には最終確認画面においても所定の事項を表示することを定めていると説明しており、分量、販売価格と送料、支払時期と方法、引渡時期、申込みの撤回・解除に関する事項、申込期間の定めがある場合はその内容が対象です。多くのカートサービスは最終確認画面の構成を改正に合わせていますが、返品や解約の条件を「利用規約を参照」のリンクだけで済ませていないか、定期購入の場合に2回目以降の金額や解約条件が確認画面に出ているかは、自店の画面で一度確かめておくべき点です。詳細は消費者庁の「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」が一次情報です。
開業後に見直すタイミング|移転・法人化・送料改定
表記ページは書いたら終わりではありません。見直しが必要になる場面を挙げます。
- 住所や電話番号が変わったとき:移転、バーチャルオフィスの契約変更、連絡先の変更。表示している場合は即日更新します
- 個人から法人になったとき:氏名から登記した商号へ変え、法人がインターネットで広告する場合の代表者または業務責任者の氏名を追加します。個人のときに省略していた住所・電話番号の扱いも、法人としての所在地・電話番号に置き換えて見直します
- 送料や決済手段を変えたとき:地域別送料の加算額の改定、後払いやコンビニ払いの追加、振込手数料の負担の変更
- 返品の条件を変えたとき:期限、対象外商品、返送料の負担を変えた場合。商品ページや最終確認画面の表示とも同期させます
- 新しい商材を扱い始めたとき:食品・化粧品・酒類など、特定商取引法以外の法令で表示や許可が求められる商材を加えた場合は、表記ページとは別に、その商材の法令を確認します
メーカーが直販を始めるときに確認すべき法令の全体像はメーカー直販の始め方|卸と衝突しない価格と最初の一品の決め方でも触れています。モールと自社ECを併売している場合、モール側の表記はモールの入力欄に従い、自社EC側はこの記事の内容で整えます。
まとめ——氏名は書く、住所と電話番号は条件を満たして省略する
特定商取引法に基づく表記は、法人でも個人でも必要で、消費者庁の特定商取引法ガイドに表示事項が示されています。個人・小規模の事業者がもっとも迷う氏名・住所・電話番号については、氏名(または登記商号)は省略できず屋号だけでは足りないこと、住所と電話番号は「請求があれば遅滞なく提供する旨の表示」と「実際に遅滞なく提供できる措置」の両方を満たせば省略できること、を押さえれば判断できます。送料・支払時期・引渡時期・返品は、購入者が自分の注文に当てはめて読める粒度で、決済手段や商品種別ごとに書く。表記ページはフッターから届く場所に置き、最終確認画面の表示事項も自店の画面で確認する。そして移転・法人化・送料改定のたびに見直す。制度の細部は改正で変わるため、判断に迷う点は消費者庁の一次情報と専門家への相談で確認してください。
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- Q. 個人でも特定商取引法に基づく表記は必要ですか?
- A. 必要です。消費者庁の通信販売広告Q&Aでは、法人であれ個人であれ氏名または名称を表示することが必要とされています。副業の小さな店や無料のカートサービスで開いた店でも、ネットで商品を販売する以上は通信販売にあたり、同じ表示義務がかかります。
- Q. 屋号やショップ名だけを書けばよいですか?
- A. 認められません。個人事業者は戸籍上の氏名または商業登記簿に記載された商号を表示する必要があり、通称や屋号、サイト名のみの表示は認められないと消費者庁のQ&Aに示されています。屋号を併記することはできますが、氏名の代わりにはなりません。
- Q. 自宅の住所や携帯電話の番号を公開したくありません。
- A. 消費者からの請求によって広告表示事項を記載した書面または電子メール等を遅滞なく提供する旨を表示し、かつ実際に請求があったときに遅滞なく提供できる措置を講じていれば、住所と電話番号の表示を省略できます。表示する場合は、現に活動している住所と確実に連絡が取れる番号である必要があります。開示用の連絡先と対応の流れを決めて、表記ページに書いておきます。
- Q. バーチャルオフィスの住所を書いてもよいですか?
- A. 条件つきで可能とされています。消費者庁のQ&Aでは、バーチャルオフィスの運営事業者が個人事業者の現住所と本人名義の電話番号を把握しており、確実に連絡が取れる状態であることなどが条件として示されています。契約するサービスがこの条件を満たしているかを確かめてください。
- Q. 返品について何も書かなかった場合はどうなりますか?
- A. 返品特約を表示していなければ、購入者は商品を受け取った日から8日以内であれば申込みの撤回や契約の解除ができ、返品の送料は購入者負担となります。返品の可否・条件・送料負担・返金方法を決めて表記ページと商品ページに書き、最終確認画面にも表示されるようにしてください。
- Q. 最終確認画面には何を表示する必要がありますか?
- A. 2022年6月1日施行の改正特定商取引法で、インターネット通販の最終確認画面に、分量、販売価格と送料、支払時期と方法、引渡時期、申込みの撤回・解除に関する事項、申込期間の定めがある場合はその内容を表示することが求められています。多くのカートサービスは対応済みですが、返品・解約の条件がリンクだけになっていないか、定期購入の2回目以降の条件が出ているかを自店の画面で確認してください。
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