公開日: 2026.05.20 / 最終更新日: 2026.10.21
Shopify掛け払い(請求書払い)の導入方法とアプリ比較
Shopifyで請求書払いに対応する3つの方法を費用感つきで比較。決済代行アプリ・帳票発行アプリ・B2B on Shopify標準機能、どれが自社の与信管理・請求フローに合うかを実務目線で解説します。
BtoBのEC構築でクレジットカード決済のみを用意すると、公開後に取引先から「請求書払いはできませんか」と問い合わせが来ます。日本のBtoB取引では月末締め・翌月末払いが標準で、購買担当者が会社のカードを持っていないことも多いためです。
Shopifyで掛け払いに対応する方法は3つあります。①NP掛け払いやPaidなどの決済代行サービスに、与信審査から請求・回収・未回収保証までを任せる方法、②銀行振込や下書き注文と帳票発行アプリを組み合わせて自社で請求・回収する方法、③B2B on Shopifyの支払い条件(Net 30など)を取引先ごとに設定する方法です。新規取引先が多く与信の手間を減らしたいなら①、既存の得意先が中心で手数料を抑えたいなら②か③が向いています。後半には、NP掛け払い・Paidの公式料金と、実装を頼む前に社内で決める4項目を載せています。
請求書払いがないと、既存取引先の一部はECを使わず電話・FAXでの注文に戻り、受注事務の手入力が残ります。一方で、決済代行の手数料は取引額に比例してかかります。手数料をすべての取引に乗せるか、相手によって使い分けるかが、掛け払いの設計で最初に決める項目です。
Shopify BtoBサイト全体の構築手順はこちら決済方法だけでなく、価格設計・顧客管理・アプリ選定・公開後の運用まで含めて整理したい方は、BtoBサイト構築の完全手順もあわせてご覧ください。なぜShopifyのBtoBサイトに「掛け払い(請求書払い)」が必要なのか?
企業間取引では、商品を納品したあと、月末締め・翌月末払いなどの条件でまとめて請求する掛け払いが広く使われています。取引先の経理は、この締めと支払いのサイクルで社内処理を組んでいます。BtoB取引をECに移すには、この商習慣に合わせた請求書払いが欠かせません。
請求書払いに対応していないBtoB ECサイトでは、次のような問題が起きます。
- 既存取引先が普段の購買フローで注文できない
- 経理処理に合わず、注文前に問い合わせが発生する
- クレジットカード決済に対応できない法人顧客を取りこぼす
- 購入直前で離脱し、カゴ落ちや機会損失につながる
取引先がECを使い続けるかどうかは、商品ページや価格表示と同じくらい、相手の社内で処理しやすい決済方法があるかに左右されます。決済手段は、営業・経理・受注処理を含めた業務設計の一部として扱ってください。
Shopifyで掛け払い(請求書払い)を導入する3つの方法
方法1:決済代行会社の「掛け払いアプリ」を利用する
もっとも分かりやすい方法は、NP掛け払いやPaidなどの決済代行サービスを利用する方法です。この方式では、与信審査、請求書発行、代金回収、督促、未回収リスク保証までを外部サービスに任せられます。
新規取引先が多い場合や、社内に与信・回収業務の人手が少ない場合に向いています。費用は、請求金額に応じた料率の手数料と、件数ごとの事務手数料や月額の固定費の組み合わせです。料率は商材や販売方法で変わるため、取引金額と件数から月々の負担を試算して判断します。
方法2:「帳票発行アプリ」で自社運用する
もう一つの方法は、Shopifyの標準機能と帳票発行アプリを組み合わせて、自社で請求書払いを運用する方法です。たとえば、銀行振込や下書き注文(管理画面で店側が手動作成する注文)を利用し、Quick Order PrinterやSAKUシンプル領収書などのアプリで請求書・納品書・領収書を発行します。
この方式は、既存取引先が中心で与信リスクが低い場合や、手数料を抑えたい場合に向いています。ただし、与信判断、入金確認、督促、未回収対応は自社で行う必要があります。
方法3:B2B on Shopifyの支払い条件を使う
B2B on Shopifyでは、取引先を会社単位で登録し、会社ごとに支払い条件を設定できます。たとえば「Net 30」(注文日から30日以内の支払い)を設定すると、その取引先からの注文を期日までの後払いとして受けられます。2026年4月からは、会社プロフィールと支払い条件がShopify Plus以外のBasic・Grow・Advancedプランでも追加料金なしで使えるようになりました(Shopify Changelog)。
支払い条件は期日を管理する機能で、与信審査や未回収の保証は含まれません。入金確認と督促は自社で行います。また通常プランでは、有効なB2Bカタログ(取引先向けの価格表)が3つまでで、会社・ロケーションへのカタログの直接割り当てや一部支払い・前払い(デポジット)はShopify Plus限定です。取引先ごとの価格パターンが少ないうちは通常プランで始め、取引量や価格の例外が増えた段階でPlusを検討します。
初期段階では、必要な機能を最小構成で実装し、運用データを見ながら段階的に拡張する進め方が安全です。最初から上位プランに合わせて要件を広げると、構築費と月額の両方が増え、使わない機能に払い続けることになります。
3つの方法の比較表
3つの方法の違いは、与信・回収を誰が担うかと、費用のかかり方にあります。
| 方法 | 与信審査 | 請求書の発行 | 入金確認・督促 | 未回収リスク | 費用の構成 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 決済代行(NP掛け払い・Paid) | サービス側 | サービス側 | サービス側 | サービス側が保証(審査を通った取引) | 請求金額に応じた手数料+件数ごと・月額の固定費 | 新規取引先が多い・経理の人手が少ない |
| 帳票発行アプリ+自社運用 | 自社 | アプリで発行 | 自社 | 自社 | アプリの月額(無料のものもある) | 既存取引先が中心・手数料を抑えたい |
| B2B on Shopifyの支払い条件 | 自社 | 帳票アプリ等と併用 | 自社(期日はShopifyで管理) | 自社 | Shopifyの月額料金に含まれる | 取引先ごとの支払期日をShopify上で管理したい |
自社与信か決済代行かを決める3つの判断軸
方法1(決済代行)と、方法2・3(自社で与信・回収を行う運用)のどちらに寄せるかは、次の3軸で決めます。この判断が済めば、アプリの候補は数個に絞れます。
- 新規取引先の比率:新規開拓を増やすほど、与信の分からない相手が増える。未回収リスクを保証する決済代行(NP掛け払い・Paid等)が向く
- 与信・回収にかけられる人手:締め請求・入金消込・督促を担える経理体制があるか。人手が足りないなら、手数料を払って業務ごと外部に任せたほうが、人件費を含めた総額で安くなる場合がある
- 取引単価と粗利:手数料は取引額に比例する。単価が高く粗利の薄い商材で全件を決済代行に乗せると利益を圧迫する。既存の大口取引先は自社与信、新規は代行と使い分けると、手数料を払う範囲を絞れる
決済代行型の掛け払いサービス(与信・回収を任せる)
NP掛け払い
NP掛け払いは、ネットプロテクションズが提供するBtoB向けの掛け払い決済サービスです。買い手企業への与信審査、請求書発行、代金回収を代行し、未回収リスクを保証します。2022年11月から、Shopify向けの決済アプリとして提供されています。
公式の料金表では、手数料は債権買取手数料0.2〜0.5%とシステム利用料(変動)1.0〜3.1%の組み合わせで、別に月額の固定利用料がかかります。料率は取扱商材や販売方法によって異なります。新規取引先が多いBtoB ECや、営業開拓を強化したいメーカーに向いており、与信判断を社内で行えない場合も、審査をサービス側に任せて取引を始められます。
Paid(ペイド)
Paidは、ラクーンフィナンシャルが提供するBtoB向けの後払い(掛け払い)サービスで、与信審査から請求、代金回収までを代行し、未回収を保証します。公式サイトの料金は、保証料が請求金額の0.5〜3.5%、事務手数料が1件125円で、取引金額や支払い条件に応じて個別に提示されます。
Shopifyには決済アプリのほか「Paid API連携アプリ」もあり、会員登録と審査結果の反映を自動化できます。BtoB ECの設計は、チェックアウトの決済手段にとどまらず、会員登録、取引先審査、価格表示、請求処理までに及びます。審査結果に応じて取引先の会員ステータスを切り替える運用を組む場合に、このAPI連携が役立ちます。
自社運用向けの請求書(帳票)発行アプリ
Quick Order Printer かんたん帳票出力
Quick Order Printerは、日本の商習慣に合わせた請求書、納品書、領収書などを出力できるアプリです。インボイス制度に沿った帳票を作る際の候補になります。
既存取引先向けに、これまでの請求フローを大きく変えずにShopifyを導入したい場合に向いています。
SAKUシンプル領収書
SAKUシンプル領収書は、領収書に加えて請求書・見積書・納品書などの発行にも対応できるアプリです。顧客自身が帳票をダウンロードできる運用にすれば、社内の事務負担を減らせます。
BtoBでは、注文後に「請求書を送ってください」「納品書を再発行してください」という問い合わせがよく届きます。顧客が帳票を自分で取得できるようにすると、この対応にかかる手間が減ります。
Order Printer
Order PrinterはShopify公式の無料アプリです。コストを抑えて帳票発行を始めたい場合に選択肢になります。
ただし、テンプレートの細かな調整にはHTMLやLiquid(Shopify独自のテンプレート言語)の知識が必要です。インボイス対応や自社独自の帳票フォーマットに合わせる場合は、開発者によるカスタマイズが必要になることがあります。
既存取引先と新規取引先で分けるハイブリッド運用
すべての取引先を一律で決済代行サービスに移す必要はありません。手数料と与信の手間の両方を抑える方法として、既存取引先と新規取引先で決済手段を分けるハイブリッド運用があります。
たとえば、長年取引がある既存の大口顧客は、自社与信のまま基幹システムや会計システムと連携し、帳票発行アプリや手動運用を組み合わせます。一方で、新規開拓先や取引実績のない顧客には、NP掛け払いやPaidなどの決済代行サービスを使い、与信・未回収リスクを外部化します。
この運用には、次のようなメリットがあります。
- 既存の大口取引先との取引条件を無理に変えずに済む
- 新規取引先の未回収リスクを抑えられる
- 決済代行手数料をすべての注文にかけずに済む
- 既存の販売管理・会計フローを活かせる
メーカーのBtoBでは、アプリの選定と同じくらい、販売管理システム・在庫管理・会計ソフト・請求管理とのデータ連携が成否を分けます。
注文データ、取引先情報、請求金額、入金ステータスをどのシステムに集約するのか。API連携するのか、CSVで連携するのか、最初は手動で始めるのか。ここを曖昧にしたままアプリを導入すると、公開後にバックオフィスの負担が増えてしまいます。
検討は「どのアプリが良いか」より「どの業務フローを作るか」から始めます。入金確認をShopify・決済代行・会計ソフトのどこで行うかを決めると、必要なアプリと連携方法が決まります。
実装を頼む前に決める4つのこと
請求書払いは、決めごとが曖昧なまま作り始めると手戻りが増えます。アプリ選定や開発を発注する前に、社内で次の4点の現状を書き出してください。見積もりの条件がそろい、設計の変更も減ります。
- 締め日のパターン:全得意先が月末締めで揃っているか、「20日締め」など取引先ごとにばらついているか。ばらつきが多いほど設計は複雑になる
- 支払サイト:締めてから実際に入金されるまでの猶予期間が翌月末なのか、翌々月なのか。得意先ごとに違う場合、その一覧が今どこにあるか(Excelか、基幹システムか、担当者の頭の中か)
- 与信枠の考え方:得意先ごとに後払いの上限を設けているか。設けているなら、その基準を誰がどう管理しているか
- 入金消込の現状:いまの入金確認・消込(入金と請求書の突き合わせ)は誰が何を使ってやっているか。ここをECとどこまでつなぐかで、作り込みの深さが変わる
4点はシステムの設定項目に見えますが、中身は自社の卸業務の決めごとです。4点を書き出せていれば、決済代行と自社運用のどちらに寄せるか、基幹とどこまでつなぐかを、発注先と具体的に話せます。得意先ごとの与信枠の決め方と、回収リスクの兆候の捉え方は、BtoB卸の与信管理|取引先ごとの与信枠と回収リスクの仕組み化に算定の手順があります。
まとめ
ShopifyのBtoB ECで掛け払い(請求書払い)に対応すると、既存取引先も新規顧客も、普段の締め・支払いの流れのまま注文できます。
導入方法は、主に次の3つです。
- 未回収リスクを抑えたい場合は、NP掛け払いやPaidなどの決済代行アプリ
- コストを抑えて既存取引先向けに運用したい場合は、帳票発行アプリ
- 取引先ごとの支払期日をShopify上で管理したい場合は、B2B on Shopifyの支払い条件(2026年4月から通常プランでも利用可)
最初からすべてを作り込む必要はありません。通常プランと決済・帳票アプリの組み合わせで始め、取引量や業務負荷に応じてShopify PlusやAPI連携を検討します。アプリを選ぶ前に、締め日・支払サイト・与信枠・入金消込の4点を社内で書き出してください。
掛け払いの導入は、アプリの選定で完結しません。与信をどちらが持つか、請求書の発行と入金消込をどこで行うか、会計ソフトへどう連携するかまで含めて設計すると、事務の総量が減ります。
Shopify・BtoB ECに関する記事一覧を見るawaiブログでは、Shopify BtoB構築、卸売EC、業務効率化に関する実務記事を継続的に公開しています。締め日・支払サイト・与信枠・入金消込の4点を書き出した段階から、awai Buildが関われます。取引先ごとに決済代行と自社運用のどちらを使うかの切り分け、Shopifyの支払い条件と帳票アプリの設定、販売管理・会計ソフトとの連携、公開後の保守運用までを担当します。
自社ECの「作り方」も「伸ばし方」も、30分の無料相談で一緒に整理します作り方・予算のかけ方・マーケの知見・広告運用のうち、どれか一つが欠けていても、良い商品は売上につながりません。現状のEC・SNS・顧客データをうかがい、どこから伴走を始めるべきかをその場でご案内します。よくある質問
- Q. NP掛け払いやPaidの手数料はどのくらいですか?
- A. 各社の公式サイトでは、NP掛け払いが債権買取手数料0.2〜0.5%とシステム利用料(変動)1.0〜3.1%に月額の固定利用料、Paidが保証料(請求金額の0.5〜3.5%)と事務手数料(1件125円)です。どちらも取扱商材・取引金額・支払い条件で料率が変わるため、月の取引金額と件数を伝えて見積もりを取ってください。
- Q. 掛け払いで未回収が発生した場合、リスクは誰が負いますか?
- A. サービスによって異なります。NP掛け払い・Paidは、審査を通った取引の未回収リスクをサービス側が負う「リスク保証型」です。審査に通らなかった取引先へ掛けで販売する場合は、自社がリスクを負います。帳票発行アプリで自社運用する場合は未回収リスクを全て自社で負います。新規取引先が多い場合はリスク保証型の決済代行が安全です。
- Q. 取引先から「納品書を再発行してほしい」という問い合わせが多いのですが、対応できますか?
- A. SAKUシンプル領収書・Quick Order Printerなどの帳票発行アプリでは、顧客が注文詳細ページから自分で帳票をダウンロードできる設計にすることが可能です。顧客が自分で取得できるようになれば、再発行の依頼は減ります。設定時に操作案内(PDF1枚程度)を用意すると、取引先が迷わず使えます。
- Q. インボイス制度に対応した請求書をShopifyから発行できますか?
- A. 対応可能です。Quick Order PrinterやSAKUシンプル領収書はインボイス対応テンプレートを持っています。ただし、適格請求書発行事業者の登録番号(Tから始まる番号)や税率ごとの消費税額を帳票テンプレートに反映する設定作業が必要です。設定後は、記載要件を満たしているかを経理担当者か税理士に確認してください。
- Q. カード決済と請求書払いは、両方用意できますか?
- A. 両立できます。新規の小口取引先にはカード前払い、継続的な卸の得意先には請求書払い、というように取引先や取引条件で決済手段を出し分ける設計が可能です。取引先ごとの決済手段の割り当ても、実装前に決めます。
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