公開日: 2026.05.19 / 最終更新日: 2026.05.19
使われるB2B ECと放置されるB2B ECの差はどこにあるか
B2B ECの失敗の多くは機能不足ではなく「作ったのに使われない」ことです。使われない原因を3つのよくある誤解から解き、得意先が毎週開くECの条件と発注側が持つべき判断軸を整理します。
B2B ECの失敗は、システムが動かないことではありません。ちゃんと動いているのに、得意先が使ってくれないことです。数百万円かけて公開したサイトの注文が月に数件、受注の主力は相変わらずFAX——この「静かな失敗」は、機能の不足ではなく発注時の思い込みから生まれます。よくある誤解を3つ、順に崩していきます。
なぜ「使われない」が致命的なのか、数字で押さえておきます。卸の受注は8〜9割が既存得意先のリピートで、受注事務の人件費は1名あたり月25〜35万円が相場観です。ECが使われれば、この定型受注の入力工数が消えて事務コストが下がる。使われなければ、数百万円の構築費を払ったうえにFAX事務が丸ごと残り、EC保守費とアプリ月額まで上乗せされて、むしろコストは増えます。「使われないEC」は投資が回収できないだけでなく、静かに固定費を増やす負債です。
誤解1: 「サイトを作って案内すれば、得意先は使ってくれる」
使われません。得意先にとって、いまのFAXや電話は「壊れていない発注手段」です。人は壊れていないものを、案内文1通で置き換えたりしません。得意先がECに移るのは、移ったほうが自分の業務が楽になると体感した瞬間だけです。
だから比較対象は常に現状のFAX・電話です。ログインして、探して、数量を入れて——という一連の操作が、FAX1枚書くより速いか。この問いに勝てない画面は、どれだけ機能が揃っていても放置されます。公開後の最初の1か月に、営業担当が主要得意先の事務所で一緒に初回注文を操作する、という泥臭い立ち上げ運用まで含めて「構築」です。
誤解2: 「機能が多いほど、使われるECになる」
逆です。B2B ECの利用者は買い物を楽しみに来ているのではなく、仕事の発注を終わらせに来ています。機能が増えるほど画面は複雑になり、週1回しか触らない得意先の担当者は操作を覚え直すことになります。
毎週開かれるB2B ECの画面は、驚くほど単純です。ログインすると自社の定番品と前回の注文が見えて、数量を直して、確定する。それだけです。レコメンドも特集バナーも要りません。発注側の意思決定として大事なのは、開発会社への要望リストを増やすことではなく、初期リリースから何を削るかを決めることです。
誤解3: 「使われないのは、得意先がITに弱いから」
都合のよい結論なので疑ってかかるべきです。年配の店主でもスマートフォンでLINEを使い、ネット通販で買い物をしています。個人としてはデジタルを使いこなしている相手が自社のECだけ使わないなら、原因は相手の資質ではなく、こちらの画面と運用にあると考えるのが筋です。
- ログインの摩擦: パスワードを忘れた時点で得意先はFAXに戻る。ID管理の設計と再発行のしやすさは最重要項目
- スマホ対応: 飲食店の発注は閉店後の厨房や移動中に行われる。PC前提の画面はその時点で選ばれない
- 例外時の逃げ道: 欠品・急ぎ・特注のとき電話に切り替えられる安心感がないと、最初からECを選ばない
正しい判断軸: 「毎週開く理由」を要件にする
3つの誤解に共通する根は、視点が自社側にあることです。「うちの受注業務が楽になるか」で仕様を決めると、得意先が使う理由のないECができあがります。要件定義の主語を得意先に置き換えてください。得意先の発注担当者が毎週この画面を開く理由は何か。その答えが「FAXより速くて、在庫と納期がその場で分かって、履歴が請求と突き合わせられるから」と言えるなら、そのECは使われます。
そして「使われているか」は感覚でなく数字で追います。次の3つを毎月見るだけで、放置の兆候は早期に掴めます。
- 得意先別のログイン頻度:案内した先が実際に開いているか。ログインすらされていなければ、原因は画面でなく案内と初回導入の運用にある
- EC経由の受注比率:全受注に占めるEC発注の割合。公開3か月で2割、1年で5〜6割が一つの目安。ここが伸びなければ立て直しのサイン
- 初回注文から2回目までの日数:1回使って戻ってこないなら、初回体験のどこかで「FAXより速い」を実感できていない
awai Buildでは、B2B ECの構築を「公開して終わり」ではなく、awai CoreによるFAX・電話との並走運用と利用率の立ち上げまで含めた受発注DXとして設計します。さらにawai Compassを組み合わせれば、得意先別の利用状況や受注チャネルの変化を経営ダッシュボードで追い続けられます。作ったのに使われない不安がある方は、要件を固める前の段階でこそご相談ください。なお、使われないシステムを生む根本原因は開発体制でなく設計にあります。詳しくは内製か外注かで選ぶと失敗するで整理しています。
より詳しくはB2B ECの再注文設計を、隣接するテーマはShopify B2Bサイトの構築手順をご参照ください。
放置されているECを立て直す手順
すでにB2B ECを持っているのに使われていない場合、作り直す前に「なぜ使われないか」を特定します。原因を外したまま作り直しても、また放置されるだけです。
- ログイン状況を見る:そもそもログインされているか、初回で離脱していないか
- 再注文の手数を数える:いつもの注文が何クリックで終わるか
- 価格の不安を確認:得意先別価格が正しく出ているか、間違いへの不信がないか
- 現場に聞く:得意先の担当者が実際どこで詰まっているか
立て直しの多くは、全面リニューアルではなく再注文導線の作り直しで足ります。B2B ECの再注文設計で挙げた履歴・定番リスト・数量記憶を見直すだけで、使われ方が変わることは珍しくありません。
順番も大事です。上の4点で原因が「案内した先の何割がログインもしていない」ことにあると分かれば、直すべきは画面ではなく初回導入の運用で、費用はほぼかかりません。逆に「ログインはするが再注文が5クリック以上かかる」なら導線の作り直し、「得意先別価格が誤表示される」ならデータ整備が先です。原因の層を外したまま数百万円の全面リニューアルに踏み切るのが、最も高くつく失敗です。作り直す前に、まずこの原因特定から始めてください。
なお、そもそもどの器を選ぶかで悩んでいる段階なら、Bカート・CO-NECT・Shopify B2Bを比較|受発注の器の選び方で判断基準を整理しています。
「作ったのに使われない」を防ぐ、または立て直す進め方を、30分の無料相談で整理します得意先の発注実態と、既存ECならログイン頻度・EC経由受注比率をヒアリングし、「毎週開かれる画面」に必要な要件と初期リリースから削るべき機能を見極めます。放置されているECの立て直しも、作り直す前の原因特定からお話しします。よくある質問
- Q. ECを作れば得意先は使ってくれますか?
- A. 見た目を整えるだけでは使われません。発注が電話より軽いか、毎週の定型作業が最短で終わるかが定着を左右します。
- Q. 機能は多いほうがいいですか?
- A. いいえ。B2Bは再注文中心なので、履歴・定番リスト・数量記憶に絞るほうが使われます。B2C的な華やかさは不要です。
- Q. 使われているかどう測ればいいですか?
- A. ログイン頻度、Web発注比率、再注文の所要時間などで測ります。放置されるECは指標が伸びず、原因は設計にあることが多いです。
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