公開日: 2026.05.19 / 最終更新日: 2026.09.14
B2B ECが使われない原因と立て直し方|使われるECとの差
B2B ECの失敗の多くは機能不足ではなく「作ったのに使われない」ことです。使われない原因を3つのよくある誤解から解き、得意先が毎週開くECの条件と発注側が持つべき判断軸を整理します。
B2B ECの失敗は、システムが動かないことではありません。ちゃんと動いているのに、得意先が使ってくれないことです。数百万円かけて公開したサイトの注文が月に数件、受注の主力は相変わらずFAX——この「静かな失敗」は、機能の不足ではなく発注時の思い込みから生まれます。よくある誤解を3つ、順に崩していきます。
なぜ「使われない」が致命的なのか、数字で押さえておきます。卸の受注は8〜9割が既存得意先のリピートで、受注事務の人件費は1名あたり月25〜35万円が相場観です。ECが使われれば、この定型受注の入力工数が消えて事務コストが下がる。使われなければ、数百万円の構築費を払ったうえにFAX事務が丸ごと残り、EC保守費とアプリ月額まで上乗せされて、むしろコストは増えます。「使われないEC」は投資が回収できないだけでなく、静かに固定費を増やす負債です。
誤解1: 「サイトを作って案内すれば、得意先は使ってくれる」
使われません。得意先にとって、いまのFAXや電話は「壊れていない発注手段」です。人は壊れていないものを、案内文1通で置き換えたりしません。得意先がECに移るのは、移ったほうが自分の業務が楽になると体感した瞬間だけです。
だから比較対象は常に現状のFAX・電話です。ログインして、探して、数量を入れて——という一連の操作が、FAX1枚書くより速いか。この問いに勝てない画面は、どれだけ機能が揃っていても放置されます。公開後の最初の1か月に、営業担当が主要得意先の事務所で一緒に初回注文を操作する、という泥臭い立ち上げ運用まで含めて「構築」です。
誤解2: 「機能が多いほど、使われるECになる」
逆です。B2B ECの利用者は買い物を楽しみに来ているのではなく、仕事の発注を終わらせに来ています。機能が増えるほど画面は複雑になり、週1回しか触らない得意先の担当者は操作を覚え直すことになります。
毎週開かれるB2B ECの画面は、驚くほど単純です。ログインすると自社の定番品と前回の注文が見えて、数量を直して、確定する。それだけです。レコメンドも特集バナーも要りません。発注側の意思決定として大事なのは、開発会社への要望リストを増やすことではなく、初期リリースから何を削るかを決めることです。
誤解3: 「使われないのは、得意先がITに弱いから」
都合のよい結論なので疑ってかかるべきです。年配の店主でもスマートフォンでLINEを使い、ネット通販で買い物をしています。個人としてはデジタルを使いこなしている相手が自社のECだけ使わないなら、原因は相手の資質ではなく、こちらの画面と運用にあると考えるのが筋です。
- ログインの摩擦: パスワードを忘れた時点で得意先はFAXに戻る。ID管理の設計と再発行のしやすさは最重要項目
- スマホ対応: 飲食店の発注は閉店後の厨房や移動中に行われる。PC前提の画面はその時点で選ばれない
- 例外時の逃げ道: 欠品・急ぎ・特注のとき電話に切り替えられる安心感がないと、最初からECを選ばない
正しい判断軸: 「毎週開く理由」を要件にする
3つの誤解に共通する根は、視点が自社側にあることです。「うちの受注業務が楽になるか」で仕様を決めると、得意先が使う理由のないECができあがります。要件定義の主語を得意先に置き換えてください。得意先の発注担当者が毎週この画面を開く理由は何か。その答えが「FAXより速くて、在庫と納期がその場で分かって、履歴が請求と突き合わせられるから」と言えるなら、そのECは使われます。
そして「使われているか」は感覚でなく数字で追います。次の3つを毎月見るだけで、放置の兆候は早期に掴めます。
- 得意先別のログイン頻度:案内した先が実際に開いているか。ログインすらされていなければ、原因は画面でなく案内と初回導入の運用にある
- EC経由の受注比率:全受注に占めるEC発注の割合。公開3か月で2割、1年で5〜6割が一つの目安。ここが伸びなければ立て直しのサイン
- 初回注文から2回目までの日数:1回使って戻ってこないなら、初回体験のどこかで「FAXより速い」を実感できていない
B2B ECを「公開して終わり」にしないためには、公開後3ヶ月の運用計画を構築の要件に含めておくことです。誰が利用状況を見るか、利用が伸びない得意先にいつ声をかけるか、FAX・電話との並走をいつまで続けるか——この3点を決めずに公開すると、使われないまま時間が過ぎます。なお、使われないシステムを生む根本原因は開発体制ではなく設計にあります。詳しくは内製か外注かで選ぶと失敗するで整理しています。
より詳しくはB2B ECの再注文設計を、隣接するテーマはShopify B2Bサイトの構築手順をご参照ください。
放置されているECを立て直す手順
すでにB2B ECを持っているのに使われていない場合、作り直す前に「なぜ使われないか」を特定します。原因を外したまま作り直しても、また放置されるだけです。
- ログイン状況を見る:そもそもログインされているか、初回で離脱していないか
- 再注文の手数を数える:いつもの注文が何クリックで終わるか
- 価格の不安を確認:得意先別価格が正しく出ているか、間違いへの不信がないか
- 現場に聞く:得意先の担当者が実際どこで詰まっているか
立て直しの多くは、全面リニューアルではなく再注文導線の作り直しで足ります。B2B ECの再注文設計で挙げた履歴・定番リスト・数量記憶を見直すだけで、使われ方が変わることは珍しくありません。
順番も大事です。上の4点で原因が「案内した先の何割がログインもしていない」ことにあると分かれば、直すべきは画面ではなく初回導入の運用で、費用はほぼかかりません。逆に「ログインはするが再注文が5クリック以上かかる」なら導線の作り直し、「得意先別価格が誤表示される」ならデータ整備が先です。原因の層を外したまま数百万円の全面リニューアルに踏み切るのが、最も高くつく失敗です。作り直す前に、まずこの原因特定から始めてください。
なお、そもそもどの器を選ぶかで悩んでいる段階なら、Bカート・CO-NECT・Shopify B2Bを比較|受発注の器の選び方で判断基準を整理しています。
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- Q. ECを作れば得意先は使ってくれますか?
- A. 使われません。判断されるのは見た目ではなく、「電話やFAXより手間が少ないかどうか」の一点です。毎週の定型的な発注が最短で終わるか、前回と同じ注文が何クリックで出せるか、欠品時に代替がすぐ分かるか——ここが電話に負けていると、公開しても利用は伸びません。公開前に、主要得意先の発注を実際に自分でやってみて、電話と所要時間を比べてください。
- Q. 機能は多いほうがいいですか?
- A. いいえ。BtoBの発注は再注文が中心のため、注文履歴・定番品リスト・数量の記憶の3つに絞るほうが使われます。レコメンドや特集ページのようなBtoC的な機能は、発注作業の邪魔になることさえあります。機能を増やすほど画面が複雑になり、「探す時間」が増えることを前提に設計してください。
- Q. 使われているかはどう測ればいいですか?
- A. 得意先別のログイン頻度、全注文に占めるWeb発注の比率、再注文にかかっている時間の3つで測ります。伸びない場合、原因は得意先の意欲ではなく設計にあることがほとんどです。利用の少ない得意先に直接ヒアリングすると、「ログインが面倒」「前回の注文が見つからない」といった具体的な理由が出てきます。
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