公開日: 2026.04.30 / 最終更新日: 2026.04.30

Shopify B2Bが通常プランに開放|中小卸の選択肢【2026年】

2026年、Shopify PlusのB2B機能が通常プランに開放されました。中小卸売業の経営者が「今なら何ができて、何は依然できないのか」を判断するための整理と、発注前に決めるべき論点を解説します。

Shopify Plus専用だったB2B機能が通常プランへ開放されたことを示す図

結論から書きます。2026年、Shopifyは会社アカウント・得意先別価格表・掛け払い・数量ルールといったB2B機能を、Shopify Plus専用から通常プランへ開放しました。従来この機能群を使うには月2,500ドル規模(為替次第で月約38〜40万円)のPlus契約が前提で、プラットフォーム費だけで年450万円超。中小の卸売業にとっては現実的な選択肢ではありませんでした。この壁が下がったことで、年商数億〜数十億規模の卸にとってB2B EC化の入り口コストは一段軽くなっています。

背景にある市場の数字も押さえておきます。経済産業省の令和6年度電子商取引市場調査によれば、日本のBtoB-EC市場は514.4兆円、EC化率は43.1%に達しています。取引の4割超がすでに電子化されている一方、FAX・電話が主戦場のままの中小卸はこの平均から大きく取り残されている——通常プラン開放は、その差を埋める初期投資が下がったという意味で効いてきます。

判断基準もあわせて言い切ります。得意先別の価格・掛け払い・最低ロットを「アプリの寄せ集め」でなく標準機能で組めるかどうか。ここが通常プラン開放の本質的な意味であり、これまで様子見をしていた卸売業が再検討すべき理由です。ただし後述するとおり、日本のB2B商習慣のすべてが標準機能で埋まるわけではありません。

何が通常プランで使えるようになったのか

開放されたのは、法人取引の骨格をなす機能群です。得意先を「会社」として登録し、その会社に紐づく担当者・支払い条件・価格表を管理できます。BtoC向けの顧客管理に法人の階層を後付けする必要がなくなりました。

  • 会社アカウント: 得意先企業と複数担当者をひとつの取引単位として管理
  • 価格表(カタログ): 得意先ごと・グループごとに異なる卸価格を提示
  • 掛け払い・支払期日: 注文時に決済せず、後払い条件を設定
  • 数量ルール: 最低ロット・ケース単位・数量刻みの発注制御

これらは2026年より前の記事では「Plusでないと使えない」と書かれていた領域です。情報収集の際は、記事の公開時期を必ず確認してください。1年前の比較記事を根拠に「うちの規模ではShopifyのB2Bは無理」と結論づけるのは、現在では誤りになり得ます。

それでも標準機能では埋まらない日本の商習慣

一方で、開放されたのはあくまでグローバル標準のB2B機能です。日本の卸売の現場で当たり前になっている商習慣には、標準機能だけでは届かない部分が残ります。

  • 掛率での価格管理: 「定価の65掛け」のような掛率ベースの価格体系は、価格表への変換設計が必要
  • 締め請求: 月末締め翌月末払いの合算請求書発行は、標準では完結せずアプリや外部サービスで補う
  • 与信管理: 取引先ごとの与信枠・限度額管理は掛け払いサービスとの連携が実務的
  • 帳票: 日本式の納品書・請求書・受領書のフォーマットはカスタマイズ前提

つまり「通常プランで安く始められる」ことと「追加コストゼロで日本の商流がそのまま載る」ことは別の話です。ここを混同したまま発注すると、見積もり段階で想定外の追加費用に驚くことになります。

通常プランで足りるケースとShopify Plusが必要なケースの比較表
通常プランで足りる卸と、依然Plusを検討すべき卸の分岐

通常プランで足りる卸、Plusを検討すべき卸

では自社はどちらなのか。発注側の意思決定として、次の分岐で考えると整理しやすくなります。

  • 通常プランで足りる: 得意先数が数百社まで/価格パターンが数種類〜十数種類/まずEC受注の比率を上げることが目的
  • Plusを検討: 得意先別カスタマイズが深い/複数ストア・海外展開がある/チェックアウト自体の改修や大量のAPI処理が必要
  • どちらでも埋まらない: 締め請求・与信・基幹連携は、プランでなくアプリ・外部サービス・カスタム開発の設計問題

重要なのは、プラン選定は論点の3割程度でしかないことです。残りの7割は「どの得意先から載せるか」「掛け払いと締め請求をどう処理するか」「基幹システムと受注データをどうつなぐか」という運用設計にあります。

発注前に社内で決めておくべき3点

開発会社に相談する前に、次の3点だけは社内で仮決めしておくことを勧めます。ここが白紙のまま見積もりを取ると、金額の幅が大きくなりすぎて比較になりません。

  • 価格体系の棚卸し: 得意先別価格が実際に何パターンあるか(感覚でなく販売データで数える)
  • 対象取引の範囲: 全得意先を対象にするのか、まず定番品の再注文だけをECに載せるのか
  • 請求の扱い: EC側で請求まで完結させるか、請求は従来どおり基幹側で行いECは受注だけにするか

開放で「費用感」はどう変わったのか

費用の変化は、金額の桁で捉えておくと判断を誤りません。従来はB2B機能を使うだけで月2,500ドル規模のPlus契約が入り口でした。通常プランなら月額は大きく下がるため、これまでPlusに固定費として払っていた金額を、掛け払いや締め請求を補うアプリ、基幹システムとの連携といった自社に本当に必要な作り込みへ振り替えられます。つまり開放の意味は「総額が安くなる」ことよりも「固定費の使い先を選べるようになった」ことにあります。具体的な立ち上げの流れはShopify B2Bサイトの構築手順で解説しています。

一方で、Plusが引き続き担う領域も具体的に押さえておきましょう。通常プランへ開放されたのはB2B取引の骨格であり、規模とカスタマイズの上限は依然としてPlusの担当です。両者の機能差は、次のような点にあらわれます。

  • チェックアウトの改変: 決済画面そのものを自由に作り替える改修はPlus寄りの領域
  • 複数ストア・多通貨/多言語: 海外展開や複数ブランドの並行運営はPlusの守備範囲
  • APIと自動化の上限: 大量の受注を機械的に流すバッチ処理や高頻度の連携はPlusが有利
  • サポート・稼働保証: 優先サポートやSLA(サービス品質保証)はPlus契約に紐づく

発注前の確認事項として、費用面でもう一点付け加えます。掛け払いや締め請求を補うアプリには月額課金のものが多く、初期費用だけでなく毎月のランニングコストが積み上がります。通常プランの月額が下がっても、必須アプリを数本重ねれば月々の総額はそれなりになります。候補アプリの月額と、それが日本の商習慣のどこを埋めるのかを一覧にしてから見積もりを取ると、Plusとの総保有コスト(買い切りでなく使い続ける前提の総額)の比較が正確になります。

制作会社が言わない、開放にまつわる3つの本音

パンフレットには載らないが、発注前に知っておくと判断を誤らない点を正直に書きます。

  • 「通常プランで安くなった」の裏で、必須アプリの月額が積み上がる。掛け払い・締め請求・帳票を補うアプリを数本重ねると月々の合計はそれなりになり、総保有コストではPlusとの差が縮む場合もある。プランの月額だけを見て決めると想定が狂う
  • 掛率と締め請求は「後で何とかなる」ではなく、最初に技術検証すべき論点。定価の65掛けのような掛率体系や月末締め翌月末払いの合算請求は標準では完結せず、ここを詰めずに着工した案件が追加費用でもめる典型パターン
  • 開放を「今すぐ乗り換える理由」に使う営業には注意。壁が下がったのは事実だが、自社の得意先がECに移るかは別問題。FAX比率が高いままなら、器を替えるより先にFAX・電話をどう吸収するかを設計しないと、EC化しても事務は減らない

自社はどちらか——3問の自己診断

通常プランで足りるのか、Plusやカスタムまで要るのか。次の3問でおおよその見立てがつきます。

  • Q1. 得意先数は数百社以内で、価格パターンは十数種類までに収まるか? → YESなら通常プランの標準機能で足りる可能性が高い
  • Q2. 締め請求・与信・複雑な掛率が商流に組み込まれているか? → YESならプラン以前にアプリ・外部サービス・カスタムの設計問題
  • Q3. 受注データを基幹システム(販売大臣・弥生販売・奉行など)とつなぎたいか? → YESなら連携設計を含めた全体像で見積もる必要がある

Q1だけYESならスモールスタート向き、Q2・Q3にYESが付くほど「プラン選定より運用設計が主役」になります。前述のとおり、プラン選定は論点の3割にすぎません。

awaiでは、Shopify B2Bの構築・基幹システム連携(awai Build)だけでなく、FAX・電話受注のAI自動化(awai Core)まで含めた受発注DXを支援しています。私たちは器を勧める前に、実際の価格体系と受注チャネル構成から「通常プランで足りる会社か、カスタムが要る会社か」を数字で見立てる無料トライアルから入ります。通常プラン開放で自社の選択肢がどう変わったのかを整理したい段階でも、ご相談いただけます。

より詳しくはShopify B2Bサイトの構築手順を、隣接するテーマはB2B ECの再注文設計をご参照ください。Amazonビジネスとの販路選択はShopify B2BとAmazonビジネスの販路比較で扱っています。

自社は「通常プランで足りる卸」か「カスタムが要る卸」か、30分で見立てます得意先数・価格パターン・締め請求と掛率の有無・基幹ソフトの製品名を伺い、通常プランで足りるか、Plusやアプリ・カスタムまで要るかをその場で仕分けます。器の営業ではなく、タイプの見極めからお話しします。

よくある質問

Q. 通常プランで具体的に何ができますか?
A. 会社アカウント、得意先別価格表、掛け払い、数量ルールなどB2Bの骨格機能が使えます。以前はShopify Plus専用でした。
Q. それでもShopify Plusが必要なケースは?
A. 得意先別カスタマイズが深い、複数ストア・海外展開、チェックアウト改修や大量のAPI処理が必要な場合はPlusを検討します。
Q. 締め請求や掛率は標準機能で対応できますか?
A. 標準だけでは完結しません。掛率の価格表変換や締め請求はアプリやカスタム、外部サービスで補うのが実務です。

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